~2~グチュ・・・・・レイドの足から這い出てきたのはなんとも蛆虫のような生き物だ。 蛆虫と違うのは、手足と触角、口に大きな牙が生えていることくらいだろう。それと、人の体内に入り込み、血を吸うことだろう。 「・・・・・・血栓虫(ケッセンチュウ)?」 ディールは疑問系の口調で言った。 それもそのはず。 血栓虫は本来体長5センチ、体高2センチほどの小さな虫だ。 その小さなはずの血栓虫が体長35センチ、体高12センチにまで膨れ上がっている。 つまりほぼ7倍に膨れ上がっているのだ。 「でっけぇな。どんくらい俺の血吸ったんだ?」 レイドは自分の傷から出てきた紅色のまん丸になった血栓虫をつついた。 血栓虫は自分の重みでコロン、と転がってかめのように手足をばたつかせた。 「~♪」 またまたレイドはご機嫌モードに入った。 「血栓虫を切ろうかなぁ~?」 そんな思惑を読み取ったのかディールが呆れ顔でレイドに言った。 「おい、まず血ぃ止めろ」 「あ、そっか」 レイドはすごく頼りになる助言を受けたように言った。 「・・・・・。」 ディールは言葉も出ないくらい呆れてしまった。 レイドは慣れた手つきで自分の足を止血した。 慣れている=こんなことがよくある。 と、いうことになる。 レイドの足の周りには、血の池としか言いようのない血の溜まりがあった。 これは全てレイドの血だ。 レイドがなぜ貧血で倒れないかというと。 レイドがしょっちゅう大量に血を出すからレイドの体が血が出た分だけすぐ作り出せるように変化したのである。 だからレイドは出血多量で死ぬことはない。 「全く、お前は・・・。すこしは自分の体のことも考えろよ」 ディールはふぅ、とため息をついた。 ディールの言うとおりである。 レイドは鼻歌を歌いながら、血栓虫の体にナイフを入れた。 血栓虫の体からはとめどなく血が流れた。 レイドはそれをうれしそうに眺めていたが、急にうめきだした。 「グルルルルルル・・・・・・」 うめく、というより唸る、といったほうが正しいだろうか。 その唸り声を聞くとディールは急いでレイドに駆け寄った。 ディールはレイドを押さえつけるように背中に背負っていた、鎖鎌の鎖を巻きつけた。 レイドの内には痛獣という神獣がいる。 痛獣はレイドの痛みに応え発動する。 痛獣が発動するとレイドはほとんど痛みを感じなくなるがその代わり暴走状態に陥る。 その暴走を止めるのがディールの役目だ。 「レ・イ・ド!!」 ディールがレイドの耳元で叫んだ。 「ギャウ!」 するとレイドが一声鳴いて倒れた。 「ったく。このあほンだら」 ディールはレイドに言った。 しかし、レイドは動かない。 すると、ディールは慌てた様子もなく指を、パチンッ!と鳴らした。 しばらくするとディールの隣に透き通るような妖精が現れた。 「何のようでしょう?」 妖精は小さいがよくとおる声で言った。 「こいつを起こしてやってくれ」 ディールが言った。 妖精はうなずくとパンッ!と、手を合わせて開いた。 妖精の手には小さな水の玉があった。 水の玉をレイドの口へ入れると妖精はレイドから離れた。 「・・・・げほっ、ごほっ!」 妖精が消えると入れ替りにレイドが起きた。 妖精に入れられた水の玉を飲んだのだろう。 ただの水だから害はない。 「ディールひどい・・・・。」 レイドは言ったが、ディールは冷たくこう言っただけだった。 「お前の後ろの方に学習能力の低い犬がいるぞ・・・。」 ジャンル別一覧
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